都市計画道路の配置密度について

AsahinaTakeshi(朝日向猛,技術士(建設部門・都市及び地方計画)
(一財)国土技術研究センター 都市・住宅・地域政策グループ)

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都市計画道路の配置密度(線密度、面密度ともいわれる。)については、実務者のための新・都市計画マニュアル,日本都市計画学(下図)によるものがよく知られている。
しかし、ここでは、従来の考え方が参考に示されているものの、その出典等は示されていない。この基準はどこからきたものだろうか?。

この新・都市計画マニュアルのなかで、都市計画道路の記載のある「都市施設・公園緑地編」は2003年3月に出版されたものである。
それ以前の2000年12月28日に、地方分権化を受けて、それまでの通達類を廃止、新たに技術的基準として「都市計画運用指針」が国土交通省から出されている。この都市計画運用指針では、都市計画道路の配置密度については、郊外の新市街地に限定したものとされ、商業地、工業地の基準がなくなってしまっている。すなわち、この基準自体は、現在では参酌するものでしかないが、それでも多くの自治体でこの基準を用いて都市計画道路の見直しを行っている。依る所としてはいまでも大きな存在である。

結論から言うと、この基準は、都市計画中央審議会「良好な市街地形成のための都市内道路整備のあり方とその推進方策への提言」(1983年5月10日中間答申) が原典である。この答申は、1982年1月の建設大臣の諮問「良好な市街地形成のための都市内道路整備のあり方とその推進方策」に対して、都市計画中央審議会が答申したものである。

その背景は、当時、「第9次道路整備五箇年計画」(1983年5月閣議決定、計画期間:昭和58~62年度))の策定を控え、そこに盛り込む都市内の道路整備目標が必要となっていたことである。道路整備五箇年計画は、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)第2条第1項に規定される計画で、日常生活の基盤としての市町村道から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路網を、適正な道路空間の確保を図りつつ、計画的に整備することにより、道路交通の安全の確保とその円滑化及び生活環境の改善を図るとともに、参加と連携による国土づくり・地域づくり、輸送の合理化 に寄与し、もって均衡ある国土の発展と活力ある経済・安心できるくらしの実現に資することを今後の道路整備の基本的な方針である。

都市計画中央審議会「良好な市街地形成のための都市内道路整備のあり方とその推進方策への提言」では、都市内の道路は市街地のまとまりその他を考慮して、都市高速道路、主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路、区画道路、その他(歩行者専用道等)と分類されるべきこと。及び補助幹線道路以上の道路については、住宅市街地では4キロメートル/平方キロ。商業系市街地では5-7キロメートル/平方キロ。工業系市街地では1-2キロメートル/平方キロが必要であるとされた。これを都市内の市街地平均でみると、補助幹線道路以上で約3.5キロメートル/平方キロとなる。また、住宅市街地の区画道路については概ね20キロメートル/平方キロが必要であることが記載されている。
(参考)日本交通計画協会「都市と交通」1983No1,,P7

これが、我々が今もって参酌している都市計画道路の配置密度の基準の原典である。
都市計画運用指針や学会の都市計画マニュアルにも原典の記載がないのも困りものだが、1980年代当時の道路整備五箇年計画を参酌し続けているというのも成長がない気もする。いや、というより、その当時の計画が、現在に比べて立派だったのかもしれない。すくなくとも、元気と希望があって実現性もあった。

(下図)実務者のための新・都市計画マニュアル,日本都市計画学会
都市計画マニュアル


(引用)都市計画運用指針(平成12年12月28日)
土地利用に応じた道路の配置(抜粋)
都市郊外の住宅系の新市街地においては、1k㎡を標準とする近隣住区を囲むように主要幹線街路、都市幹線街路を配置することとし、これらに囲まれた区域から通過交通を排除し良好な住宅地としての環境を保全するようにすることが望ましい。これらに囲まれた区域内においては補助幹線街路を適切に配置することが望ましい。住宅系の既成市街地おいては、現状の市街地形態を勘案し、新市街地における配置の考え方を踏まえつつ、主要幹線街路、都市幹線街路で囲まれた区域内において、通過交通を排除し良好な環境を保全するようにすることが望ましい。

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